モバイバル・コード
「いい…?普通、人に、愚痴の一つや二つくらいを言うことくらいは分かるよね?どうして言わないのか、自分で分析した事…ある?その顔じゃ無さそうだけど……」


 オレの引きつり笑いを見て、愛梨が頬を緩めた。


「慶二兄さんも、龍二さんも、大人が龍ちゃんの事を買ってるのは、『ココ』だと思うの。龍ちゃんの『強い』ところ。上手く言葉で言えないけど……。

それが表に出てるんだよ、だからあたしも……気になってちゃうんだ。本当に、この人は大丈夫なのかなって心配になるのっ!」


 意識した事なんて、無かった。


 確かに、言われてみたら小さい愚痴や文句は、ブーブー愛梨と文句を言っている気がする。だけど、自分がしなければならない事になれば、文句を周りに言った事は、無いと思う。


 『勉強が分からない』とか、『今日はアルバイト面倒くさい』くらいなら言っているけど……深く悩むことも無い。


「龍ちゃんにはもっと自信を持って欲しい。大人だって、ストレスを抱え込んでうつ病になっちゃうんだよ?龍ちゃんは、まだ高校生なのに耐える力を持っていると思うの。耐える力って言葉で、その長所を表していいのか分からないけど……」


「愛梨、例えるならアレじゃないか?『克己心』(こっきしん)だよ」


「こっきしん?」
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