モバイバル・コード
 カメラは男の背中を映し出していた。男はよろめきながら、奥へと歩いていく。右に通路があるらしく、ふっと姿が消えた。


 監視カメラは再び正面から男を捉えている。さっきから通路を歩く様子しか撮影していない。


「……それで、この社長が何してるわけ…?ここで…」


 オレの疑問に二人は首をかしげるだけだった。


「まぁ、そうだよな……分からないよな、そもそもここどこな」


──突然


 男が壁をパンチしだした。何度も何度も。


「えっ!?何してるの、この人……」


 愛梨が反射的にオレの身体に寄り添った。確かに様子がおかしい、男は電話を右手に持ち、画面を見てもう一度右手で壁を殴っていた。


「龍ちゃん、僕達も壁を殴れって言われるのかな……」


 雷也のボケとも分からない話に、答えずに画面を見続ける。血が飛び散り、白い通路を汚す。
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