モバイバル・コード
「はい、お水。酷かったよ、今……大丈夫なの?」


 喉が渇いた。身体が、水分を欲していた。一気にコップの水を飲み干し、やっと頭がスッキリしてきた。


「ああ、大丈夫……慶兄が、夢で……」


 愛梨は眉間にシワを寄せて険しい顔をしていた。そうか、あんまり……女にこういう顔を見せるのは良くない。


「大丈夫だから……心配かけてごめんな、愛梨」


「……全然、大丈夫じゃないよ、龍ちゃん……」


 どうして、お前が泣きそうな顔をするんだ……?


「え、大丈夫、だって」


 愛梨は、整った顔に、一筋の涙を流した。少し薄暗い、室内の明かりが涙を一層際立たせる。


 愛梨の白い指が、オレの頬に触れた瞬間に、気づいた。


──涙


 オレが、泣いていたのか……。
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