モバイバル・コード
 こういう所が、現場仕事の人間っぽいんだよな。


 軽く礼を言って加藤さんの横に座る。


 雨空といえど、遠くの雲を見ていると仕事の疲れを忘れさせてくれる。


 学校でもどこでも、オレは雲を見てる事が多い。


 放蕩な自分に、重ね合わせてるのかもしれないな。



『シュッシュッシュッシュッ』



「つかないな……おっ」


 オレの黄昏(たそがれ)のタイムを裂いた加藤さんは、4回目の着火でタバコに火をつけた。


 タバコを吹かしながら、本当に美味そうにコーヒーを飲んだ。


 この人はアルバイト先の所長さんだ。


 支店のお偉いさんだし、引越し作業にもこうして出てる忙しい人。


 初バイトでも丁寧に教えてくれる、優しいおじさんってところだ。
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