モバイバル・コード
「考えるポイントが煮詰まってきたね、龍ちゃん。雷也には『3G回線』って送っておくからね」


 彼女は、努めて明るく振舞っているが……オレ達の現状は、死神の鎌を首筋に当てられているのと同じだろう。


 100m走で換算すれば、先にライバルが30m先を走っている状況だ。後半の伸びに期待するしかない。


「愛梨、コートとか重い物は脱ごう。走る事になる」


 愛梨がいつもなら文句を言う場面でも、捨てる事に躊躇(ためら)わないのは事の重大さが分かっているからだろう。


 まだオレ達は、正解ルートの探し方を知ったわけじゃない。


 オレと愛梨の携帯間でのメッセージの『遅れ』で、どうやって道を見つける……?


──『ブブブーンブブブーン』

──【 メ ッ セ ー ジ 】──
■『L1ar4584』より■

【行動派の龍ちゃんらしくないね……って言っても、この状況でこのヒントじゃ難しいのは分かるけど。ただ、2つの推理と2つの事実を組み合わせてみたら、面白いことが浮かんだからやってみよう。

推理① 3人の役割には、それぞれ意味がある。

推理② ジャマー(妨害装置)が壁の中に存在する意味は、僕達3人の回線を操作するため。


事実① 愛梨と龍ちゃんの間のメッセージが、なぜ遅れて届くのか。

事実② 最後のこの最終戦だけ、サイト上からメッセージを送らせるのではなく、『アプリケーション』を使わせている。


この4つを組み合わせると……。


ゴール地点に居て、ナビゲーターをしている僕宛てに、二人がメッセージを送るんじゃないのかな。


メッセージの内容なんて、なんでもいい。着目するのは、着信の『時間』だ。


時間が、ヒントになっていると思う。二人共、僕に『あ』ってメッセージ送ってもらえる?


1回目は二人がそばにいて、同時に送信。2回目は、ちょっと二人が別の通路にたって、声を出して同時に送信して。僕、ずっと携帯を見てるからね。この『意味』が分かるでしょ?】

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