モバイバル・コード
 雷也のこの驚きようじゃ、よっぽど凄いことなんだろう……確かに、桁が凄い。


「あ、兄貴、現金って……どうしてこんな事が出来るの? しかも2億って、一つのサイトが払うにしては大きすぎる」


 もっともだ。現金で2億円。確かに凄い。携帯のゲームをしてもらえる金額ではない。

 
 これじゃ宝くじと変わらない。


「そんなもん決まってるだろ。ジャコパがあらゆる場所に協賛をかけて作った新サイトだからな。お役所の力を舐めるなよ?」


 ルームミラー越しに見える慶兄は、得意げな表情だ。


「それなら尚更おかしいんじゃないかな……? 国がこんなギャンブルみたいな真似を許すなんて……」


 愛梨も同調していた。


 政府が主導になってこんな賞金を賭けるなんて……おかしい。


「おいおい、お前達は俺のインタビューをテレビで見たんじゃないのか? 

違法でこういう事をやる会社を潰す為に『規制』ではなく国がサイトを『創造』すると言っただろ?

俺は有言実行してるだけ。それだけだよ。着いたぞ」


 話に夢中になっている内に、赤い屋根の家が見えてきた。


 愛梨の家に来たのは中学校以来だ。それも1年の時だからずっと前か。


 それ以降はなんとなくお互いに意識して、近づかなくなった。


 オレ達も成長したって事だろうな。


「ありがとう、慶二兄さん。次はお食事誘ってね。雷也と龍ちゃんは置いていくからね」


 慶兄はボーナスが出たらなと軽口を叩いた。この約束が守られることは無いだろう。
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