モバイバル・コード
 なんとなく不安な気持ちを、殺した。


 ほんの小さな種火なのに、なぜか激しくオレの心を揺さぶる。


 車はオレの家の近くの公園の前に止まった。


 どこにでもある少し広めの公園。


 剥げた芝生が、今の季節が秋だって事を思い出させる。


 昔からオレや雷也や愛梨が遊んでた場所だった。


 最後に来たのは中学校の卒業式の後だったかな。確か、ブランコに座りながらいつまでも話をしてたんだ。


 想い出の場所と、憧れの人。でも、なぜかオレの鼓動は不安を増幅させていた。


 人なら誰もがこういう感覚を持っている。


 この世に生まれ、成長を遂げるに連れて色々な体験をして習得する。


 『経験』による物だ。


 経験則から来る嫌な予感。小学校の頃に読んだ本にはそう書いてあった。


 慶兄は車を降り、トランクを空けて何かを取り出す。


「ほらっ」
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