モバイバル・コード
「忘れてた、龍一。俺の給料、政府の金だぞ、お前それでもいいのか」 


──『ウィーーン』


 自動ドアから出て行った竜二の背中が、窓ガラス越しに見えた。車のキーを上に投げては、キャッチしながら意気揚々と歩いていた。


「そうだ……龍ちゃん、さっきあんなにカッコいいコト言ったのに」


「愛梨、うるさい。この金は……」


 確かに、政府の金だ。間接的にはそうなる。


「わたしの、お小遣いだから……大丈夫だよっ」


 葵の明朗な声は、成長の証だった。


「そうだ、そうだよ。だから、大丈夫。『マモル』にはやっぱり勝てないな」


 雷也がわざとらしくイントネーションを変えて、マモルと呼んだ。
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