モバイバル・コード
 眼鏡をかけた少年──雷也がチラりと横を見る。黒髪の少年──龍一はこくりと頷いた。

 とりあえず、『アドリブで繋げろ』という合図だった。


「あーみんな、聞いてくれるかい。この高城 葵ちゃんは、この男、龍一とは一切付き合っていない。ただ、葵ちゃんは……」


 雷也は、視線をすっと龍一へ流した。


 龍一はわざとらしく、咳払いをする。


「ゴホンッ。みんな、聞いてくれ。おい、後ろの方、うるさい。

高城 葵ちゃんが、男の子を『スキになる条件』が一つだけあるんだと。

携帯ゲームが強い男が好きなんだって。

んで、このメガネの霧島雷也に勝てば、付き合ってもいいそうだ。

今人気のサイト、『ラブモバイバル』で戦って勝つんだ。

ちなみにオレは、雷也と引き分けたから、少しだけ好かれている。そうだよな、葵ちゃん」


 葵はみんなに分かるように、深く頷き、凄い速度で携帯を打ち出した。緊張した場合に話せなくなるのは、相変わらずらしい。


【この、霧島雷也さんに勝った人と付き合います】


 後ろで背伸びをしている男子生徒にも見えるように、背伸びをして、高く携帯を掲げてラブモバイバル戦の公示を行う。
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