モバイバル・コード
「えっ!? ちょっ、ちょっと、龍ちゃんっ!葵ちゃんも何言ってるの!? 僕がなんで戦わないと」


「やったな、雷也!これで対戦相手に困らないぞ。じゃ、オレは先に屋上行ってるから」


 龍一は葵に目配せをしてウインクを1回送り、雷也の方をポンと叩いた。


「よっしゃ!じゃあ、雷也君、早速勝負してくれ!おれが一番で」


「いや、僕だ!高貴な妖精にふさわしいのは、血筋がいい僕しかいない! お父さんに買って貰った最新携帯で勝負するから」


「何が血筋だよ!お前の顔のどこがっ!」


「あ、わいは葵ちゃんの為ならなんでもするんや!!」


 賑わいを避けるように、龍一は階段を登った。


「龍ちゃん、ただの『モバイバル』なのに、『ラブモバイバル』なんて造語作らないでよっ!みんな待って待って、押さないで、押すなっ!」


 後ろから雷也の声が聞こえたが、龍一は振り向かずに右手だけを振った。すっかりあの男の癖を真似しているようだ。


 カッコいいと思った事はすぐに取り入れる、龍一なりの流行表現だ。
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