モバイバル・コード
「ねぇ……気になってるコトがあるんだけど……」


 購買で買ってきたパンをかじりながら、龍一は喋ろうとした。食べながら話す悪癖は、未だに直らない様だ。


「ん、どうした、のっ」


「返事、聞いてないよ…?あの、白い部屋の……あたしの……あの、返事」


 『ぎくり』


 愛梨は、龍一のリアクションをそう読んでいたが、意外に冷静な態度に首をかしげた。


「いや、返事したよ」


「えっ……いつ?」


「携帯で、あの時、打った」


「嘘……あたしの所には、届いてないよ…?」


 龍一は額にしわを寄せ、目を細めた。どうして届いていない、送ったはずなのに。心の気持ちは、そのまま愛梨に伝わった。


「打ったにしても……届かないと、意味が無いよ?」
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