モバイバル・コード
 声のトーンが一つ高くなった愛梨が続ける。


「あたしだって雷也は凄いと思うよ。携帯のゲームで2位とか3位を維持するなんて、普通出来ないし、そんな雷也がついてるなら本当に2億だってもらえると思うし。もちろん貰ったらあたしにも分けてね」


 二人の笑い声が聞こえてくる。


 ちゃっかりお願いしてる所が、愛梨らしいや。


 普段はおちゃらけて見えるけど随所で気を使う所が女の子だった。


 二人なら、お互いの欠点を補ういいカップルだと思う……。ほんの少しだけ、胸の奥にしこりは残るけど。



「……ありがとう。ただ一つだけ気になる事を兄さんに言われたんだ」




──『困った時は龍一を信じろ』




「もちろん聞いたさ、何のことって。そうしたら『ゲームを初めて少ししたら』と言われて……。


突然ブツリと電話が切れて。かけ直したけど繋がらなくてさ」



 オレに聞け?


 何を?


 携帯のゲームのことでオレに聞くの?



「変だね。その時間なら他の人から電話がかかってくるわけでもないだろうし。寝ちゃったとか?」



 雷也が焦って続ける。



「とにかく、今日の夜にもう一度電話してみるよ。3人集まるなら都合も良いし……」


 慶兄……何か引っかかる。
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