スワロウテイル
そして、数年が過ぎた。


あの夏の次の年、私はその場所を訪れたが、やはりリコリスには会えなかった。


あの場所には彼岸花が咲いているばかりで、彼女はその次の年もいなかった。


私は大人になった。


学校を卒業し、就職して、厳しい外の世界に晒されて。


それでもがんばった。


自分を嫌いにならないように。


好きになれるように。


自分のことを見つめて。自分のことを知って。


常に前を向いて進んだ気がした。


だけれど、世界は理不尽で、少しも優しくない。


繰り返される日々が過ぎて行くうちに、生きている社会がどんどん灰色に見えて、他人との付き合いに疲れ果ててしまった。


この世界では私はとてもちっぽけな存在だ。


悲しいことがあって泣いていても、叫んでも、感情はどこにも響くことも出来ず、空をさ迷っている。


他人が口にする自分の容姿のことは気にならずに普通に過ごせていたが、慣れない異性からのアプローチに翻弄され、傷ついたりもした。


世界は優しくなんてない。


騙されることもたくさんあって、私はその度に酷く悲しくなった。


そして、私はそう言った痛みを覚えるたびに、過去の思い出に逃げ込む。
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