幽霊とバステト
次、目が覚めるとベッドの上だった。
天井がいつもと違う。
ここ、病院だ。よかった…助かったんだ。
両隣りに、お父さんとお母さんがいて、私の手を握ってた。
温かさに心が苦しい。
目を開けた私にお母さんが気が付いた。
「汐梨っ!!!」
「お母さん…」
その声で俯いていたお父さんが立ち上がる。
「お父さん…」
瞬間頬を殴られた。
「お父さん!!今はまだやめて!」
「うるさい。お母さんは黙って!…汐梨、お前は自分で何したかわかってるか?」
「……ご…めん…なさ…。」
涙が溢れる。
痛い。心が痛い。
お父さんが殴った頬に触れた。
「痛いか?すまない。起きたばっかりで、殴ってしまって…」
首を横に振る。
「…死ななくてよかった!!!」
お父さんが抱きしめる。お母さんも抱きしめる。
三人で泣いた。
「汐梨…お母さんたちが守るから。」
「うん。」
「でも逃げないでほしいの。」
「さっきまで、舞子ちゃんと美月ちゃんがいたんだ。全部聞いた。」
「そっか…二人は?」
「泣きながら謝ってたよ。でも、もう夜も遅いから帰らせた。また明日来るって。汐梨が嫌なら、お父さんが断るぞ。」
「ううん。逃げたくないから、戻ってきたんだもん。だから、お母さん私は大丈夫!」
二人は不思議そうな顔をしてる。
「お母さん…私いいよ。」
「なにが?」
「私…お姉ちゃんになるんでしょ?お姉ちゃんになりたい。」
「なんでそれを…」
二人には信じてもらえなくてもいいと思って自分が経験した不思議な五日間のことを全て話した。
二人はまさかとか、そんな、って言葉詰まらせて驚いてたけど、
「素敵な時間だったのね。汐梨が大人の見えるのはそのせいかな」
と、笑ってくれた。
次の日、美月たち四人が昼から見舞いにきた。
ここが美月のお父さんの病院ってことは今日の朝知った。
美月は私が運ばれてきたことを父親の電話で知り駆けつけた。
私の姿を見た時に自分のしたことの大きさに気付き、全てを父親に打ち明けた。
父親はそんな美月を初めて叩いた。
痛いか?美月が感じたこの痛み以上に汐梨ちゃんは…お前はバカだ。やっと出来た友達だったろ…。
と、言ったらしい。
美月も中学生の頃私立でイジメにあっていて、それを知った両親は引越しをして今の高校を選んだ。
「汐梨を気持ちがわかっていたのに…ごめんなさい!」と、美月が言った。
舞子たちも謝る。
「もういいの。みんなは悪くない、そりゃ全然って言ったら嘘になるけど…結局死ねことを選んだのは自分自身だったから。」
それに、もう十分謝られたから、本当に気持ちは晴れてる。
4人は夕方まで一緒にいた。
1年半を埋めるように沢山話した。
三日後私は家に帰ってきた。
いつもの近所の雰囲気に泣きそうになる。
帰ってきたんだと痛感する。
玄関を開けると金木犀の香りがした。
これは私の好きな香りだ。
お母さんがしてくれたのだと気づく。
お母さんを見た。
お母さんは相変わらず優しく微笑んだ。
一歩一歩確かめるように家へ入って行く。
血で汚してしまったお風呂場も廊下も綺麗に掃除され跡形もない。
リビングに入ると片付けられたテーブルの上に一冊のピンク色した小さな手帳があった。
母子健康手帳。
あの時私がしたように置かれていた。
手に取ってお母さんをみた。
「どうしてか、そうしたくなったの。」と、笑った。
嬉しくて涙が溢れる。
お腹空いたでしょと、お母さんが台所に立つ。
テレビでも見るかと、お父さんはテレビをつけた。
あの時見たような光景がここにある。
小さな手帳を抱きしめ泣いた。
少しして出されたナポリタンは変わらずいい匂いで、やっぱり世界一美味しいナポリタンだと思った。
天井がいつもと違う。
ここ、病院だ。よかった…助かったんだ。
両隣りに、お父さんとお母さんがいて、私の手を握ってた。
温かさに心が苦しい。
目を開けた私にお母さんが気が付いた。
「汐梨っ!!!」
「お母さん…」
その声で俯いていたお父さんが立ち上がる。
「お父さん…」
瞬間頬を殴られた。
「お父さん!!今はまだやめて!」
「うるさい。お母さんは黙って!…汐梨、お前は自分で何したかわかってるか?」
「……ご…めん…なさ…。」
涙が溢れる。
痛い。心が痛い。
お父さんが殴った頬に触れた。
「痛いか?すまない。起きたばっかりで、殴ってしまって…」
首を横に振る。
「…死ななくてよかった!!!」
お父さんが抱きしめる。お母さんも抱きしめる。
三人で泣いた。
「汐梨…お母さんたちが守るから。」
「うん。」
「でも逃げないでほしいの。」
「さっきまで、舞子ちゃんと美月ちゃんがいたんだ。全部聞いた。」
「そっか…二人は?」
「泣きながら謝ってたよ。でも、もう夜も遅いから帰らせた。また明日来るって。汐梨が嫌なら、お父さんが断るぞ。」
「ううん。逃げたくないから、戻ってきたんだもん。だから、お母さん私は大丈夫!」
二人は不思議そうな顔をしてる。
「お母さん…私いいよ。」
「なにが?」
「私…お姉ちゃんになるんでしょ?お姉ちゃんになりたい。」
「なんでそれを…」
二人には信じてもらえなくてもいいと思って自分が経験した不思議な五日間のことを全て話した。
二人はまさかとか、そんな、って言葉詰まらせて驚いてたけど、
「素敵な時間だったのね。汐梨が大人の見えるのはそのせいかな」
と、笑ってくれた。
次の日、美月たち四人が昼から見舞いにきた。
ここが美月のお父さんの病院ってことは今日の朝知った。
美月は私が運ばれてきたことを父親の電話で知り駆けつけた。
私の姿を見た時に自分のしたことの大きさに気付き、全てを父親に打ち明けた。
父親はそんな美月を初めて叩いた。
痛いか?美月が感じたこの痛み以上に汐梨ちゃんは…お前はバカだ。やっと出来た友達だったろ…。
と、言ったらしい。
美月も中学生の頃私立でイジメにあっていて、それを知った両親は引越しをして今の高校を選んだ。
「汐梨を気持ちがわかっていたのに…ごめんなさい!」と、美月が言った。
舞子たちも謝る。
「もういいの。みんなは悪くない、そりゃ全然って言ったら嘘になるけど…結局死ねことを選んだのは自分自身だったから。」
それに、もう十分謝られたから、本当に気持ちは晴れてる。
4人は夕方まで一緒にいた。
1年半を埋めるように沢山話した。
三日後私は家に帰ってきた。
いつもの近所の雰囲気に泣きそうになる。
帰ってきたんだと痛感する。
玄関を開けると金木犀の香りがした。
これは私の好きな香りだ。
お母さんがしてくれたのだと気づく。
お母さんを見た。
お母さんは相変わらず優しく微笑んだ。
一歩一歩確かめるように家へ入って行く。
血で汚してしまったお風呂場も廊下も綺麗に掃除され跡形もない。
リビングに入ると片付けられたテーブルの上に一冊のピンク色した小さな手帳があった。
母子健康手帳。
あの時私がしたように置かれていた。
手に取ってお母さんをみた。
「どうしてか、そうしたくなったの。」と、笑った。
嬉しくて涙が溢れる。
お腹空いたでしょと、お母さんが台所に立つ。
テレビでも見るかと、お父さんはテレビをつけた。
あの時見たような光景がここにある。
小さな手帳を抱きしめ泣いた。
少しして出されたナポリタンは変わらずいい匂いで、やっぱり世界一美味しいナポリタンだと思った。