幻恋
寧人が浮気したって、どうなったって、やっぱり私は寧人の事………
「好、き…だよ…
寧人……くっ…」
『………』
「…っ!
だ、誰ですかっ!」
背後から妙に人の気配を感じて、ばっと振り返ると、そこには一人の男の子の姿があった。
まだ背丈が少し低いから、中学一年生なのかもしれないけど、人が泣いてるのをボーッと見つめてるなんて、一体どういう事なのよ!
「…あんた、誰?」
『…』
私が聞いても、一向に黙ったままのその男の子。
思わずカッとなった。
「何?
私の顔になんか付いてる?」
『いや…』
男の子はフルフルと首を振ると、私の顔をじっと見つめた。
思わず、ドキッとした。
この男の子は、背丈は私と同じ位だけど、わりとカッコいい顔つきをしていて、少し凛々しく見える大人っぽい表情だった。
『…君の顔見てたら、なんかこっちまで悲しくなってきちゃって』
寂しそうに言う男の子。
「だから、何?
私はどうなろうが、あなたには関係無い事でしょ?」
『…何があったの?』
「何って…別、に…… 何もな…い……」