幻恋
望んでもいないのに、溢れ出す涙。
拭っても拭っても、私の涙は止まるという事を知らず、むしろ余計に出てくる。
男の子は黙って、それ以上根掘り葉掘り聞こうとはしなくて、ただ黙って、一人大泣きする私を見つめていた。
ようやく私の涙が止まると、ずっと黙っていた男の子は口を開いた。
『…で?
一体、何があったの?』
さっきは全く話す気が無かったけど、今はこの子になら話しても良いと言う気持ちになり、私は全てをその男の子に話した。
男の子は、真剣に耳を傾けてくれた。
一通り話し終えると、男の子はフーッと小さな溜め息を付いた。
『…なるほどね』
男の子はふんふんと頷いている。
「でも…
寧人とは、もう……駄目だよ…」
『駄目なんて言わないで。
大丈夫、僕に任せて』
「えっ?」
『僕に任せて』って、この子に私たちの問題が解決出来るって言うの?
『…今まで大事にしてくれたんだもん、僕だってお礼位しないとね』
ボソボソと男の子が何かを言っていたけど、外の声にかき消されてしまった。
「ごめん、今聞こえなかったんだけど。
今、なんて言ったの?」