幻恋

取り壊し



…私は、二上(ニノウエ)春華。

丁度一ヶ月位前に、高校一年生になったばかり。



そんな放課後のある日。


SHRが終わり、私は鞄を持ち、友達に手を振り、教室、1-Aを出た。


そして、誰共話さずに校門まで出た。


そう思った時、ふと母校の中学校を思い出した。

…私の母校は、この高校から一旦電車で地元に戻り、駅から10分位歩いた辺りにある、公立正邊(マサベ)中学校。

この中学校には、築80年の、開校同時からある旧校舎がある。

あの旧校舎は、どれだけの数の生徒がこの学校に入り、旅立って行く様子を見ているんだろう。

そんな、思い出が沢山溢れている旧校舎は、もう所々にカビが生え始め、老朽化が進みつつある。

でも、ひび割れたコンクリートの灰色の壁や、何度も何度も直してある窓ガラスが、私にとっては、逆に歴史を感じさせてくれる、凄く良い存在だった。



そんなこんなで、結局“正中”に来てしまった私(あっ、“正中”は、正邊中学校の略なんだけど)。

[どんな時でも、正しい生徒像]

これが、正中のスローガンだったが、とてもじゃないけどそれが守れているとは言えず、むしろ、[不良だらけの学校]と言っても良いかもしれない。

















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