幻恋


最初は第一希望はサックス、第二希望はトランペットだったけど、どっちも上手な子が優先的に選ばれて、残念ながら希望は叶わなくて、第三希望を考えてなくて迷ってた私に、先生が推薦してくれたのが、フルートだったんだ。

初めのうちはズタズタで、なかなか綺麗な音を出す事が出来なかった。

でも、三年生、二年生の先輩たちが優しく教えてくれて半年、やっと綺麗な音を出せるようになったんだ。

今となっては、フルートをやって本当に良かったと思う。

「…はい、今日はここまで」

そんな、顧問の弥生先生の声が聞こえて来て、その直後に新部長で、今年で三年生となった、笹村(ササムラ)さんの号令を掛ける声がした。

その途端、辺りがザワザワと騒ぎ始め、その後すぐに、ガチャリとドアが開けられる音がした。

「……!」

引退した卒業生の私がいる事に、かなりの衝撃が走ったらしい、今年三年生になったサックス担当の男子部員の後輩、早山(ハヤマ)君。

でも、その後、驚愕な顔からみるみるうちに明るい笑顔になった。

「ニ上先輩!!
ひ、久しぶりです」

ぺこり、と頭を下げた早山君は、くるりと踵を返し、皆に向かって大きな声を出して言った。

















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