幻恋
「おーい!
特に二、三年生!
二上先輩が来てくれたぞー!」
そう叫んだ直後、私の周りに二、三年生の後輩たちが集まって来た。
特に、フルートの後輩だった、今年三年生の恵美(エミ)ちゃん、未来(ミク)ちゃん、紗耶香(サヤカ)ちゃんは、私を目敏く見つけると、嬉しそうに駆け寄って来てくれた。
あれ、紗耶香ちゃん、髪切った?
「春華先輩!
お久し振りです」
「紗耶香ちゃん、髪切った?」
「はい!
先月、春休みにバッサリと」
紗耶香ちゃんは、腰辺りまであった超ロングヘアを、肩に付かない位のボブにバッサリ切っていた。
「何~?
失恋でもしたのぉ?」
少しからかい気味に言うと、紗耶香ちゃんは瞬時に耳まで真っ赤になった。
「し、してないですっ!
…もうっ、春華先輩、からかわないで下さいっ」
「あはは… ごめんごめん」
「春華先輩、聞いて下さいよっ」
未来ちゃんが、少し怒り気味のような表情で私に声を掛けた。
「うん?」
「…あ、の……。
旧校舎の事、なんですけど」
「旧校舎?…が、どうかしたの?」
凄く嫌な予感がして、聞きたいような聞きたくないような、複雑な思いが込み上げてきた。