幻恋
「…寧人」
私の声に反応し、寧人がハッと抱き合っていた女の子の体を離し、こっちを振り返った。
謝って来ても、許すつもりは無かった。
これから私に、『これは…勘違いだ。 春華、ごめん』とでも言うのではないかと確信していたからだ。
でも…アイツの口から発されたのは、最悪の言葉で、表情は真顔でも、目はニヤついているように見えた。
「…ハハッ、何だよ春華、今日はやけに来るの早ぇーじゃないか。
俺にそんなに会いたかったのか、ん?」
…と、私に向かってニヤニヤした表情でそう言ってきた。
…パンッ……!!
「…っ……最っ低!!」
私は寧人の頬を思いっきりひっ叩き、逃げるように教室を飛び出し、一人で家に一目散に向かって走った。
家の玄関を開け、そのまま二階にある自分の部屋に飛び込んで、ベッドに突っ伏して暫く泣き続けた。
その3日後、卒業式の次の日、寧人に別れを告げられた。
後悔はしてないし、むしろ清々してると思ったけど、その日も思いっきり泣きじゃくってしまった。
やっぱり…浮気なんかあっても、寧人の事は人として、一人の男として、私にとってはずっと好きなままの存在だった。