溺愛宣誓
ぎこちなさと戸惑いしかない私と深光さんを交互に眺めて織田さんが怪訝そうに尋ねる。
「二人は知り合いだったのか。」
それに先に我に返ったのは深光さんで、彼は柔和な顔にぎこちないながらも笑顔を浮かべて応えた。
「ああ、うん!海外赴任する前にね、華ノ子ちゃんの家の近くに住んでてね、華ノ子ちゃんが高校生の時にちょっとダケ家庭教師してたんだ。」
「そ、そうなんです。深光さんが押しの弱い性格なのを良い事に、母が強引にお願いしちゃって…。あ、あの、あの節は本当にお世話になりまして…」
「ああ、うん。いや、こちらこそ…。」
あははは…と笑い合うものの。
き、気まずいっ!!!
そんな私達を織田さんは眇めた目で見据える。
「…他になんか、ある?」
「ななな、ないよ!何も!」
「ないないない!何もありません!」
「……ふぅん。」
折角来たのに早速帰りたそうな深光さん。
その雰囲気が分からぬ筈もなかろうに織田さんが「まぁ、コーヒーでも呑んでゆっくりして行けよ。深光さんの家なんだしな。」と拒否権ナシの笑顔で引き留めた。