溺愛宣誓

ソファーで向き合い、私は徐にお兄ちゃんから授かった催眠グッツを取りだした。



……改めて見ても、胡散臭い。



糸が付いた五円玉。

お兄ちゃん曰くこの五円玉も糸も普通の五円玉と糸に見せかけて、最新鋭の技術の真髄が凝縮された特殊な五円玉と糸らしい。

ていうか、五円玉って…。

NAさ……ならぬNASUは日本企業なのかしら…。


「えっと、私がこの五円玉をゆらゆらしますので織田さんはそれをじっと見ててくださいね。じゃ、じゃあ、い、行きますよ!…アナタはだんだん眠くなる~…アナタは…」


一生験命糸で吊るした五円玉を左右にゆらゆらさせる私。

そしてそれを生真面目に目で追う織田さん。


「何と言うか、目の前で猫じゃらしを振られる猫の気持ちが分かる気がする。」

「こ、これは獲物じゃないので、手を出したらダメですよ、織田さん。」


そんなやり取りを挟みつつ、暫くして織田さんの長い睫毛がゆっくりと降りて行った。


「…か、かかった……みたい?」

「うん。」

「ほ、本当にかかってます?」

「ガッツリかかってる。」


胡散臭い物を感じつつ、納得した。

お兄ちゃんも『かかって無いように見えても実はガッツリかかってるから。』って言ってたし。

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