溺愛宣誓


嗚呼…チクショウ。
羨まし過ぎる…。


天澤寺は内心で地団太を踏み荒らしながらも大人的に営業スマイルをキープし、礼儀とばかりに後ろの女性にも挨拶をしようとした。

が。

右に傾いだ天澤寺の視界に織田。

左に傾いでも織田。


…オイ。


「ああ。プライベートな事なので特別知り合わなくても良いかと思いましたが一応ご紹介はした方が宜しいですか。…彼は俺の会社の取引先の方。そして彼女は俺の恋人です。」


何ですかその形骸的な紹介、名前もナシ?

しかも見えてナイ見えてナイ。

彼女小柄だからオマエで皆既月食ナウ。


まぁ、織田が弄ぶ程度の女なんて興味無いからいいけどな…。


「あ…あのっ……織田、さん…」


震えるような声がして、織田の影からひょこりと女性が現れた。

天澤寺の心臓がぎゅっとして、視界からは彼女以外の色が消え失せ、雑音さえも途絶えた。



「あ、あの…ご、ご挨拶が遅れまして、ししし失礼致しました。私、織田さんのかかかかか彼女の鞍馬華ノ子と申します。」

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