溺愛宣誓
途端織田は天澤寺の存在を丸投げし、身体毎彼女に向いた。
「カノ。俺以外の男と口なんてきかなくていい。」
「で、でもっ…。織田さんの会社関係の方だし…。あの、…挨拶も出来ない彼女だなんて…わ、私の所為で、お、織田さんの評価を落としたくない、です。」
「ああもう。なにそれ…カノが可愛過ぎる!でもね、カノが挨拶しないくらいで崩れる程俺の評価は脆く無いんだ。だから安心してこんな男ガン無視したらいいんだよ。」
そんな二人のやり取りの最中、天澤寺の脳内を一瞬見た彼女の姿がリピートする。
ぺこんと頭を下げる仕草も
俯き加減の真っ赤な顔も
天敵に鉢合わせた小動物みたいなうるうるした瞳も
震える声音も
「…ナニソレ、スンゴク、カワイイ…」
途端、織田が天澤寺を振りかえった。
鬼の形相。
瞳など彷徨える憐れな亡者を一睨みで無に替えてしまえるほどに凍てついている。
「カノが可愛い事など誰に言われんでも俺が一番分かっとるわ。それより今すぐ脳内からカノを消さずば貴様のド頭かち割るぞ。」
「…君、仮にも取引相手に向かって…。」
「ぐぁぁぁっ!コイツ絶対夜のドキドキ妄想シアターでカノを登場させて口で言えないようなあんな事やこんな事をさせて楽しむ気だ!」
「っ…、ちょ、しししませんよ!妄想だなんて。しかもあんな事やこんな事など………。あんな事やこんな事…。」
「今すぐ消せぇぇぇぇ!!!」
「し、してないっ!妄想なんてこれっぽっちもしておりません!!!」
織田は庇うように華ノ子の肩を抱き、天澤寺に不快も露わな表情を向けた。
「では今後も業務上は恙無く宜しくお願いします。が!プライベートは雑魚モブで一切関わりなく!」
「せめて嘘でも社交辞令ぐらい取り繕ってくれませんかね。」
天澤寺のぼやきに返事はなく、織田が華ノ子を持ち運ぶ体で二人の姿はあっちゅう間に人ごみにまぎれ視界から消え失せた。
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