溺愛宣誓



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「副社長、早いとこ目を覚ましてさっさと仕事を終えて頂けませんか。」


朝比奈泰代は目を開けたまま夢の世界へトラバーユしている上司を冷たく見下ろし、冷やかに言った。


「す、すまないっ。や、別に寝てたわけじゃないんだが……」


我に返った天澤寺は、惜しげもなく冷気を放っている部下に無意識に身体を竦める。


今時のドラマなんかの秘書と言えば、内情はコレステロール値が高い血くらいドロッドロであれ、見た目はキラッキラで大奥みたいに美しさを競い合ってるものだろうに……

朝比奈に至っては例えるなら由緒正しきお屋敷のメイド長だ。

キュートとは対極に居る女。

キビシイ、キツイ、コワイ…ああ、3Kが揃ってしまっている。


「零時までに終わらなくばワタクシは―――…」

「え?ナニ?君でも『魔法が解けちゃうゾ☆』的なシンデレラ発言しちゃうのか?」

「際限なく分裂して凶暴化するかもしれません。」

「そっち!?食べ物与える設定スキップしているし!大体十二時前だってギャップと言う程可愛くn―――――」

「タイムリミットまで五十一分三秒切りました。」

「スミマセン。急ぎます。」


慌てて手元の書類に被りついた時、キィッと軽快にドアが開いて、もう一人の右腕とも言える部下・太原雪斎が現れた。

太原は、見た目今だ学生にも間違われる程の童顔の愛くるしい容姿で、愛相も抜群によいが、中身はよもやと言う程の腹黒の毒舌だ。


「おっつー!!!てかまだ仕事してんですかぁ?ダメ副社長~。」

「チッ…酒が入っていつも以上に口が軽くなっている。ほろ酔いとはイイ身分じゃないか。」

「「何言ってんだ(ですか)。アンタが行く筈の会食を仕事が終わらないから代わったんだろが。」」

「スミマセン。」


とても冷たい部下達の対応に、天澤寺は慌てた風を装って書類に戻る。
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