溺愛宣誓

「経費節約がうたわれている昨今、副社長自らそんなゴミを制作しないでください。しかも労働時間内に。この月給泥棒が。」

「いや、これはあのっ………すみません…。」

「しかし…、仕事のさせ過ぎで少々病み気味かとは存じておりましたが、鹿に熱を上げまでとは…。ですがこれで、副社長が失踪した暁には捜索地の目途が立ったというもの。奈良ですね。」


いやいやいや、失踪まで追い込む前に仕事をセーブして下さい。


天澤寺は、“一人で悩まないで!”的な相談室に『部下が酷過ぎる』と切実に相談したくなった。


「もーイイ具合に熟したオッサンなんですから、女の一人や二人さらっと騙してベッドに連れ込みましょうよ。」

「いつもの事ながら太原は、その何も知らなさそうな天真爛漫な顔でさらっとゲスい事言うよな…。」

「縄、鞭、麻酔銃…、何をご用意致しましょうか?今でしたら先ほど注文したボールペンと共に明日の午後には届くかと。」

「大手事務用品のネット通販でもそんなモノまで揃えてナイと思うけどね!?てかそれ狩猟系!?それともアダルト系!?や、どっちでもイイケド朝比奈さんの思考自体が怖すぎなんだよっ!」


天澤寺はハァと疲れた溜息を零す。


「もうこの件についてはイイんだよ、ほっといてくれ。彼女はもう他の男のものだし…。」

「じゃ、やっぱりちょちょいと騙して既成事実つくっちゃうのが手っ取り早いっすね。」

「狩りは早い者勝ちです。素人でも撃ちとり易い散弾銃が宜しいかと。」


ゴメン。

ホントもうほっといてください。



意外に親身な部下に有り難みを感じつつ、とんだ結果しか招きそうな予感しかしないので協力は懇切丁寧にお断りしたい天澤寺だった。





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