溺愛宣誓
「で。あれが天澤寺さんのターゲットかぁ~。」
「確かに可愛らしい方ですが、角はありませんしあれで本当に鹿なのですか?」
「ねぇ…君達何でいるの?」
天澤寺が残業を振りきって、とある会社の入り口の見える遮蔽物の影に身を潜めていると、終業になり華ノ子が現れた。
それに胸トキメかせる天澤寺の背後で、聞き慣れた声が二つ。
いつの間にか有能過ぎる部下二人までもが現れた。
「副社長に任せていたら、騙せるモンも騙せやしませんからね!」
「いや、いやいやいやっ!もう、マジでほっといて!!!今日だってただ一目みたいだけで、別に声かけるつもりでもなく―――」
「きっしょ!!!オッサンがキッショ!オッサンのストーカーが気色悪っ!!!」
煩いっ、ダマレ!太原!!
「副社長、これをお持ち下さい。」
朝比奈の突き出す物を咄嗟に受け取る天澤寺。
カップのコーヒー?
「ちなみにとあるデータによると現代の女性の好みの流行りはツンデレ、俺様系です。」
「ハイッ!リピートアフタミー!!強引八割、後の二割は優しさで出来ている!セィッ!」
「え?は?へっ?強引八割、後の二割は優しさで………って、有名な某お薬でさえ優しさ配合はもっと高いと思うが。」
「ちなみにワタクシ達の成分は興味本位百パーセントです。健闘を祈ります。」
「えっ!?なんか聞き捨てならな―――…って、ちょ!?」
朝比奈に突っ込み終わる前に天澤寺は太原にどんっと突き飛ばされて歩道に躍り出た。