溺愛宣誓

その拍子にどんと誰かにぶつかった。


「きゃっ……す、すすすすみませんっ」

「いや、寧ろこちらこそ――――…。」


非常識な部下に無慈悲に突き飛ばされました、と言いかけたまま天澤寺はぶつかった相手を見て放心してしまった。


「かかかかか華ノ子しゃんっ」

「へ?え?あ!…ぁ…天澤寺、さん?」


名前を覚えていてくれた!


感激する天澤寺の後ろで


「てか、今壮大に噛んだねぇ~!ウケル!」

「しゃんってなんなんでしょう、しゃんって。お子チャマですか、恥ずかしい。」


遮蔽物から煩い声が二つ。

ほっとけ!!!


「あっ…わわ…ぶつかった拍子に天澤寺さんのスーツにコーヒーが……お、お高そうなスーツに…。ご、ごめんなさい。」

「え、や、いやいやいや、気にしないで下さい。ぶつかったのはコチラに過失が―――…」



「「ないわ」」



え?


唐突にセリフを遮った声に天澤寺は振り返り、飛び上がりそうになった。


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