溺愛宣誓
予約など勿論無かったが運のいい事にそこそこ高級なフレンチレストランにすんなり入れた。
急な出費だがその点は心配無い。
なんせ稼いでも稼いでも非道な部下達が使わせてくれる時間をくれないからね…。
レストランは食事も夜景も一流。
女の子なら喜びそうなものだが、正面に座る彼女はと言えば先ほどから身を固くして俯いたままガタブルしている。
ヤバイ…これはメッチャ怯えられている。
でも、プルプルする姿がマジ可愛い。
「あ、あの…華ノ子さん、ワインをもう少―――…」
イタイッ!
頬にぶつかってきた物に言葉を途切って見てみればテーブルにズッキーニの欠片。
横のテーブルを見れば、サングラスを取って杜撰にもカップルを装っているらしい部下二人が
「俺様」「ツンデレ」
とカンペを出してくる。
くそっ、AD気取りか!
「ええっと、あの…………俺の酒が呑めないというのか。何なら貴様の血でこの杯を満たしてやろうか。」
物騒なセリフに飛び跳ねた華ノ子は「いいいいただきます」とグラスでワインを受け取る。
「ぅわぁ…何処の魔王様よ。」「俺様じゃなくてヤ○ザですね。」
と、隣の監督達が心底嫌そうな顔で突っ込む。