溺愛宣誓
「それで通常業務に加えて、予定に無い新規取引案件をねじ込んだもんだから、流石に定刻で終われなかったんだ。」
「お疲れ様でした織田さん!!でも…私の為にあまり無理して欲しくない…です。」
「ああ!俺の心配をしてくれるカノがとっても愛おしくて、あえて無理をしたくなる!」
困ってうろたえる華ノ子を安心させるように「冗談だよ」と織田が微笑む。
いや、全く冗談には見えないが。
「俺は迎えに行っといて失敗して一人でむざむざ逃げ帰ったイザナギみたいに抜けてナイよ。迎えに行くと言ったからには必ず連れ帰る。でもまぁ…万が一カノが帰れないとなったら俺もそこに残るから二人で黄泉の国をエンジョイしような。」
「織田さんっ……!」
真っ赤な顔でうるうると目を潤ませる華ノ子と、照れてはにかむ織田と…。
もはや周囲など見えていないらしい二人が店を出て行くのを天澤寺は無言で見送った。
グラスを手に虚しく呟く。
「完敗~…」
あ。字面が違った…。
いや、合ってんのか。
感傷に片足突っ込もうとした天澤寺に容赦ない鉄拳が二つ飛んできた。
「「このすっとこどっこいがぁぁぁっ!!!」」
「何なの君達!それが傷心の上司に向かって言う言葉か!?」