溺愛宣誓
真っ赤になって悲鳴のように訴える私に織田さんははっとし「あ。ごめん。」と慌てて離れた。
少し赤くなった頬を隠すように掌を添えながら溜息混じりに呟く。
「カノの可愛さにうっかり吸い寄せられてしまった。」
お・だ・さぁぁ―――――んっ!!
なんつー甘い、あまりに甘いお言葉をさらっと口にするの。
しかもそんなイケメンが照れながら言うなんて、殺戮兵器モノですけど!!
脳味噌まで沸騰しかけつつ、はっとした私はバッと向かいに顔を向けた。
バッ――、
と保奈美ちゃんと大三さんが勢いよく両耳を塞いだ。
あからさまな聞か猿デスカッ!?
いやぁ~、お願いだからココは突っ込んで!
その微妙に赤くなった顔で業とらしくスルーされる方がよっぽど恥ずかしいんですけど!!
恥ずかしさのあまり半泣きになる私を救うようなナイスタイミングで店員さんがお料理を運んできた。
助かった。
「カノ、ローストビーフだって。君好きって言ってたよね。食べるだろ?」
「え?あ、…は、はい!」
織田さんに問われて、思わず子供のような満点の返事をしてしまった。
だって、まだ数回会ったばかりでお互い知ってる事より知らない事の方が断然多いのに、ちらっと話したような話さないような些細な好みもちゃんと覚えててくれてるなんて。
やっぱり織田さんは私には勿体ないくらいステキな人だ。
しかもか、トングを手にお皿に取り分けるそのスマートさったら…
そんじょそこいらの女子より俄然気が利く!
ていうか、彼女の私カタナシ!
少々気落ちしながらも「はい。カノ」と言う声に、せめて感謝の意を!と頑張って向けた笑顔が「有難うございま、…す」の声と共に引きつった。