溺愛宣誓
新人OLにデレデレと鼻の下を伸ばしている上司が居ようものなら
『セクハラしてる余裕があるなら一秒でも早く俺の書類にハンコを押してくれやがりませんか。さもなくばその散らかした頭部の雑草を全て引っこ抜いて更地にしやがりますよ。』
と書類の束を叩きつける有様だ。
社会人としてその態度はいかがなものかと思うが…。
しかして、言動に多少の問題はあるにせよ、彼の言い分は一々正しく、とんだ成果を弾き出しているのも湾曲の余地なき事実であるから、誰ひとり彼を咎められる者はいなかった。
寧ろぼやぼやしていたら社長以下管理者クラスといえども容赦ない激を飛ばされるので、畏怖の対象とされ、裏ボスと称されて憚らない。
顔はイイから彼女なら尽きた事もないが
『織田っちクリスマスイブはどーすんの?』
『どうするって仕事に決まってる。年末だから忙しいだろ。』
『彼女どうするの。』
『……。俺に今彼女なんていたか?…ああ。ひょっとして最近頻繁にメールを寄こすこの女、彼女だったか。迷惑メールうぜぇ、ブロックしようか、と思っていたんだが。』
『ちょ、自分の彼女の名前ぐらい覚えてあげて!』
『日本の首相並みにころころ変わる女なんか覚えてられっか。』
それでも周囲に諭されて、仕方なしに彼女とやらに連絡を入れ、イブの約束をし、プレゼントも用意する。
が、当日。
『仕事しなきゃいけないのは俺の所為じゃない。どこぞの糞上司がサンタ気取りで、すっかり忘れていた仕事を一時間前にプレゼントしてきたんだよ。アァ?飯だぁ?レストランは予約してある。イイ大人なんだから飯ぐらい一人で食いに行ってこい。プレゼントは郵送してやる。それで文句な――――……チッ、話の途中で電話切りやがった。』
『…当然だろうね。』
大体こんな経緯で振られる。