溺愛宣誓
仕事が終わって茜色に染まった世界にせかせかと飛び出せば見知った顔が満面の笑みで手を振ってきた。
「あ~華ノ子ちゃ~ん。おつ~。」
途端、大三さんに隣に居た織田さんの容赦ない鉄槌が落ちた。
「何で俺を差し置いてオマエが人の彼女に声掛けてんだ。絞めるぞ。」
私の会社はオフィス街と言われる界隈の一郭にあって、実は織田さん達の会社もその中にあるのだ。
それで仕事後の待ち合わせはもっぱらウチの会社の前になった(織田さんが私の会社まで来てくれる。)
人見知りな私ですが、大三さんは保奈美ちゃんの彼氏だし、織田さんのオトモダチだし、もうだいぶん慣れた。
それで近寄って行った所で固いながらも頑張って笑顔を向ける。
「大三さんも、お、お疲れ様です。織田さんとご一緒に現れるなんて珍しいデスネ。」
「うん。織田っちが華ノ子ちゃんを迎えに行くっていうからさぁ、俺も便乗して保奈美ちゃんと帰ろっかなって!サプライズで迎えに来ちゃったヨ。」
「ええっと…保奈美ちゃん今日に限って残業ですけど。」
「えっ!!!……………や、待つよ。彼女が待てと言うならいつまででも!!」
「……今日に限ってはシンデレラコースですけど。」
「待つよ。待ちます。待てば待つほどその後のご褒美が美味しくなると言うものだからね!」
愛ですね、大三さん。
しかつめらしい顔をした織田さんは「放置プレイ大好きとか。オマエのそれは愛じゃなくて単なるマゾ根性だろ。」と突っ込む。