溺愛宣誓
『あ。今調べたらちゃんと織田市姫って書いてあるわ。』と電話口から保奈美ちゃんの声が聞こえた。
「えーマジ!織田っちの妹ォ?」
「えーでも誰も織田さんって呼んでないし、名札だって…」
「えーだって姫の方が可愛いし、私に似合ってるんですも~ん。」
((ああ…確かに。その悪びれない態度、織田(っち)(さん)と同じ血を感じる))
だから織田さんを狙われる心配はないのだけど―――
「一目見た時から、いつもプルプルおどおどして年上らしくないきゃわいらしい鞍馬先輩に運命を感じました!」
どうやら狙われているのは私だったらしい。
「これまではあのドSな保奈美先輩が鞍馬先輩を一人占めしたいのか威嚇してくるので中々近づけなかったんですけど―――」
『おいこら。さらっと先輩をドS呼ばわりすなっ。』
「だったら可愛い後輩を演じて鞍馬先輩の信頼と愛情をじわじわ搾取していこうかと思っていたんですが、バレてしまったからには、これからは正々堂々と愛を叫び、更衣室での着替えをガン見し、抱きつき、撫で回し、押し倒し弄り倒し―――」
「ちょ…っ、美人妹。セーフ範囲一個目までのアブナイ願望、ハァハァしながら叫ばないでっ!」
「そうだぞ!俺のカノにそんな事っ………俺がしたいわ―――――っ!!!」
「ちょ―――っ、イケメン兄もハァハァしながら呼応しないでっ!」
『…なんか大変そう。』と電話口から聞こえた保奈美ちゃんの呟きは、
周囲を見回しながら青くなったり赤くなったり仕舞いには紫になりながら二人に突っ込む大三さんに向けられた物のような気がする。
「さぁ、鞍馬先輩…いいえ、私の可愛いバンビ先輩。私の手を取って!二人で幸せに暮らせる幸せの国へ逃避行しましょう~。」
「誰がさせるかっ!!カノは俺の恋人だ!妹といえどもカノに手ェ出したら容赦しねぇぞ!!」
格好良くて、優しくて、少し変わっている彼氏の織田さん。
…その家族も少し変わってると知った日。
::::::::::::::::::::::【とある妹とご対面記念日*end】