溺愛宣誓

それにしても花時計の前に立つ織田さんは相変わらず格好良い。

それはかかか彼女の贔屓目とかじゃなく、周囲を行き交う老若問わない女性達の視線を掻っ攫っている状況が雄弁に物語っている。

あああ…あんな所にこんな平々凡々な私が近づいて行くなんて…………なんてプレッシャーなんだろう。


まごまご戸惑っているうちに、一人の女性が彼に近づき声を掛けた。

え…あの女性って…………


「え~、まさかの薫子さん!?」


唐突に耳元で弾けた声に飛び跳ねた。


「えっ、あれっ、市姫さん。こんな所で会うなんて偶然だね。」

「はいっ!凄い偶然ですネ♪日に日にそわそわおろおろする先輩の態度にもしやと思って、出張った甲斐がありましたぁ。」


………いや、それは偶然と言うのかな。


デートを邪魔する気合いが見え見えの市姫さんに、力なく笑う。


「所で市姫さん、あの人…薫子さんって。企画課の香坂主任だよね?」

「へぇ~、薫子さんって今ウチの企画課の主任なんですか。」

「う、うん。二ヶ月くらい前に海外の支店から赴任してきて。美人だし、仕事出来るしで、結構話題になったんだけどな。ま、まぁ、課が違って接点もないもんね。」

「ですよネ。それに今の私の瞳には華ノ子先輩しか入らないですもの。」


私一途でしょ♪の露骨なアピールに若干引いて後ろへ下がる。

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