溺愛宣誓
市姫さんは改めて身を引き、勿体ぶるようにウエーブを指に絡めて言った。
「薫子さんはアニキの大学時代の彼女ですよ。」
ギクリと心臓が軋んだ。
「美人なのも出来る女なのも定評通りです。ついでに言えば性格も悪くなかったです。」
ゴンと頭上に隕石が落ちて来たような衝撃が走った。
「あのアニキにしては珍しく長く続いた方なんじゃないですかね。」
………そよ風にさえよろめいてしまいそうな程に心折れた。
俯いていた私の顎をひょいっと持ち上げ、私より幾分背の高い市姫さんがうっとりした目で私の顔を覗きこむ。
「はぁぁぁん。やっぱり泣くのを堪えてぷるぷるしてる先輩って、ほんと可愛過ぎでヤ・バ・イ。」
……ヤバイのは絶対市姫さんの方だと思います。
てか若干おちょくられている気がしてるのは私の間違いかな。
私と市姫さんはそろそろと花時計の影に移動した。
というか移動した私に市姫さんも付いてきた。
繁みの蔭から見ても香坂主任は文句なしの美人だった。
まるで彼女の周りにお花が咲き乱れて見えるくらいに………
あ。それは花時計の花だった。
知的で聡明そうで落ちついた大人美人さんだ。