溺愛宣誓
「本当に久しぶりね。」
「ああ。そうだな。」
応える織田さんにいつもの刺はなく、表情も心なし柔らかい気がする。
「柔らかいですね、これは。ヤツにしてみたら相当心を開いていたとしか思えませんね。」
「ちょ、市姫さんっ。心の声に返事をしないで!そして悪魔みたいに不安な事を囁くのは止めてぇっ」
涙目で訴える私の耳に香坂主任の衝撃的なセリフが飛び込んできた。
「ねぇ、私達もう一度やり直せない?」
オワタ……こんな美人に私が敵う所なんて一つもありゃしない。
「だって私達、私が海外転勤になったのが原因で別れてしまったけど別に嫌いになって別れたわけじゃないでしょ?」
そ、そうだったんだ。
「私、出澄の事好きよ。ドライで合理主義で…」
「断る。俺には今彼女がいる。」
きっぱりと言い切った織田さんに香坂主任はふふっと笑った。
「酷い男なのに二股しないのは相変わらずなのね。いいわ。じゃ、一週間待ってあげる。」
「は?何で一週間?」
「忘れた?大学時代も同じ事を言われてフラレタけど、一週間後に彼女に振られて私と付き合ってくれたじゃない。」
隣で市姫さんが「華ノ子先輩ももうぼちぼち…だったり?」と囁く。
織田さんと私の
「「縁起でもないっ」」
とそれぞれの相手に突っ込む言葉が重なった。