溺愛宣誓
あの日も終始俯いていたから顔は見られなかったけど、手元は良く見えた。
織田さんは迷いもなく小皿にソースを入れて、時折振られる言葉に返事をしながらソースを付けたお刺身を食べていた。
……変わった人!!!
彼は私がこれまで出会った人とは違う不思議な感性を持っていて、私をもっと驚かせたりドキドキさせたり、ともかく色々仕出かしてくれるんじゃないかと思ったら、期待と興味で居ても立ってもいられなくなった。
もっともっと彼の事が知りたい。
引きつって固まる織田さんの横でナンパさん達は「「ないわ」」と揃って首を振った。
「刺身にソースはないわ。」
「彼女も!食文化は大切よ?嗜好の違う奴と一緒になってみ。後々大変よ?俺の父ちゃん、目玉焼きにマヨネーズ掛ける派なのずっと母ちゃんに言いだせなくて、結婚五年目にしてストレスでハゲよ?」
「それはオマエ……ストレスじゃなくて単なる若ハゲDNAだろ?」
「てか目玉焼きにマヨネーズはないわ。」
「え゛っ!?マジで!?」
奈落の底に突き落とされたようなナンパさんとそれを宥める相方のナンパさん。
そんな二人から顔を戻した織田さんは赤くなった顔を片手で隠すようにして言った。
「や、ゴメン。俺も刺身には断然醤油の無個性派だ。あの日は醤油だったかソースだったかも正直覚えてない。その……君に見惚れれて。」
「えっ」
「目の前でずっと俯き加減で、そわそわプルプルしてて…すっげー可愛いなぁと思って…」