溺愛宣誓
不図、隣を見れば市姫さんが奇怪なダンスのように身を捩っていた。
「人として見ちゃいけないモノを見た気分ーっ!兄貴が気持ち悪いを通り越し、いっそ怖いぃぃ。」
はっ…そう言えば香坂主任は?
慌てて彼女に視線を向ければ、香坂主任は遠い目をして静かに首を振っていた。
「…ないわ。クールでドライな出澄が気に入ってたのだけど……あれはナイ。無い中でも酷いわ……。」
変わってしまったのねぇ、としみじみ呟いた彼女と目が合う。
「貴女が出澄の彼女なのね。経理部の鞍馬華ノ子さん。」
「え、あ、は、はい。」
香坂主任、私の事知ってるんだ。
主任はニコリと微笑んだ。
「末永くお幸せに。」
それだけ言いて主任はもう彼には目もくれず颯爽と去って行ってしまった。
何故だか、強力な恋敵は不戦敗となり、私は勝利にホッと胸を撫で下ろしたのだった。
「てか、何で市姫がココに居るんだっ!」
「アンタに用はナイわよっ!私は偶々デートを妨害しに来ただけですぅ!」
「デートの妨害に偶々はナイだろっ!とっとと帰れ」
「嫌よっ!徹底的に邪魔してやるんだから!」
言い合う織田さんと市姫さん。
本当に仲が良い兄妹だなぁ…。
::::::::::::::::::【とある恋戦勝利記念日:end】