溺愛宣誓
「あ、あの…なんか、スミマセン。…兄はちょっと人見知りで…」
「でも、先ほどの出会い頭の時は、もっと猛々しかったというか気が強い感じだったけどな。」
「女装している時は気が大きくなるみたいです。」
兄があんなふうになっちゃったのは全部元はと言えば私の為なんだ。
もともと私も兄も気が小さくて、人見知りなタイプだった。
しかし妹思いの兄は、二人してそんなんじゃダメだ。自分ぐらいは強くなって妹を守らねば、と決意した。
そして男の子が変身ベルトで強くなるように―――兄は女装でパワーアップするスキルを身に付けた。
「ああ………何でソコ変身アイテムにスカート選んじゃったかね。」
お巡りさんが遠い目で突っ込む。
「あ。でも女装が高じて、ある日路上スカウトされ今では一躍人気のユニセックスモデルなんですから、結果オーライかな…、っと。」
場の雰囲気を改善しようと勤めて明るく言った私に「……そぅ。」とソファーから声が続いた。
「長丁場の…ショーが海外であって……久しぶりに日本に帰って来て、…華ノ子を驚かそうとこっそり会いに来てみれば……何処の馬の骨とも分からぬ男と華ノ子が……あの華ノ子が……僕の可愛い妹が………く、ふ…ヘケケケケケケケケケケ……」
「怖いッッ!!ソコ笑う要素全く無いですよっお兄さん!!」
「僕は……認めないゾ~…。華ノ子から離れるまで僕はイヤガラセし続けてやるぅ……。」
「ちょ、怖いって!…ちなみにイヤガラセとはどんな?場合によっては立場上見逃せませんが。」
「神社行ったり…」
「神頼み?」
「お百度参り。」
「怖いっ!!!」
「鏡を見る度、左肩に僕が映り込む、……的な」
「出来るの!?てかソレ地味にメッチャ怖いっっっ!!!」
「これ人見知りのカテゴリか?」
眉を顰めた織田さんがそっと突っ込む。