雨の日はブルー
1

辻井の言葉を断ってきたものの、


予想以上に雨は降っている。


さすがに駅まで走ることはできない。


そう悟った苳は、


目の前にあったさびれた花屋に駆け込んだ。


「やっば…もうビショビショ…」


胸のあたりまで伸ばした長い髪から


雨に濡れて水が滴っている。


苳はその水をしぼり、


カバンを開け、中を漁った。


「もう、最悪。タオルもないじゃん」


苳は大きくため息をついて


カバンを地面に置いた。


「ほんと…ついてないなぁ…」


もう一度ため息をついて、


まだ雨が降り続く空を見上げた。


すると、視界の隅に


ハンカチのようなものか映り


苳はそっちのほうを振り向いた。


「これ、使う?」


ドキンと胸が鳴り、


つい返事をすることも忘れてしまった。


「あっ…すいません…」


苳はしどろもどろになりながら答えると


差し出されたハンカチを受け取った。

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