雨の日はブルー
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辻井の言葉を断ってきたものの、
予想以上に雨は降っている。
さすがに駅まで走ることはできない。
そう悟った苳は、
目の前にあったさびれた花屋に駆け込んだ。
「やっば…もうビショビショ…」
胸のあたりまで伸ばした長い髪から
雨に濡れて水が滴っている。
苳はその水をしぼり、
カバンを開け、中を漁った。
「もう、最悪。タオルもないじゃん」
苳は大きくため息をついて
カバンを地面に置いた。
「ほんと…ついてないなぁ…」
もう一度ため息をついて、
まだ雨が降り続く空を見上げた。
すると、視界の隅に
ハンカチのようなものか映り
苳はそっちのほうを振り向いた。
「これ、使う?」
ドキンと胸が鳴り、
つい返事をすることも忘れてしまった。
「あっ…すいません…」
苳はしどろもどろになりながら答えると
差し出されたハンカチを受け取った。