東京血風録
話を戻そう。
素早い小さい魍魎に遥も慌てた。
木刀をいつでも振れるよう後ろに構えながら走っていた。
そして、念も流しでいた。
それも強めの念を。
すると、それは起こったのだ。
木刀の切っ先から30センチほどの所から、空気が渦を巻いていた。
木刀に巻き付くようにそれは渦巻いていた。
気流の流れは、よく見なければわからないほどのものであったが、確実に巻き付いていた。
魍魎に追いついた遥は、そやつの体に木刀を突き刺した。
すると、魍魎の体は渦巻いた気流の力により、激しく四方へ飛び散った。
この時の魍魎の内部の色は、血のような深紅であった。
尚も渦巻く気流は、霧散しようとする魍魎の切れ端を、風に舞う花びらのように木刀の切っ先を中心に渦巻かせた。
深紅の渦。
それを見た遥は呟いた。
「血風吹きあれん、か」
そうして、その技は命名された。