東京血風録
第1章  鬼の棲む男

1 悪霊狩り師


東京都千代田区。
午後3時過ぎ。
この日の天候は曇り。




オフィス街のビル群の中、通りを1本入ると、その雑居ビルはあった。
通りと言っても人1人がやっと通り抜けられるような細い路地。
ちゃんと説明を聞いた者でさえ、ともすれば見落としてしまうような路地である。
従って、人の往来は極めて少ない。
その雑居ビルも、テナント募集の看板を掲げているものの、3階建てで9部屋あるテナントも実際には、2組の企業か個人経営の者しか借りていない。
その1つ、3階の角部屋。
西側に面したその部屋には、西日が差し込んでいた。

「姉さん、いつまで寝てるつもり?」
少年は訊ねた。
 部屋の中央、簡素な応接セットが置いてあるが、テーブルを囲んだ3人掛けのソファーの1つに女が横たわっていた。
 少年は、漆黒の詰め襟の学生服を着て傍らに佇んでいる。
 女性は濃紺のスーツ。
何もかけずに、ソファーの肘掛けに両脚を投げ出して寝転がっているのだ。
タイトなスカートから覗く脚はスラリと長い。
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