東京血風録
彼、藤堂飛鳥の話によれば、飛鳥の体質(?)は、生まれもって霊的な存在を全く受け付けない体質らしい。
視えるが寄せ付けない。特異体質らしい。
従って、
彼が霊を殴れば弾き飛ぶし、抱きついたりすれば、行き場を失って忽ち霧散してしますものらしい。
確かに遥とは対極にある存在らしい。
それから、面白い能力を見せてくれた。
ぱんっ!と、自身の胸の正面で両手を打ったかと思うと、その手をゆっくりと離していった。その距離、30センチ。
その間には、うっすらと霧がかった球体があった。
ちょうど、シャボン玉の中にタバコの煙を入れた時のような具合である。
しかも、色は黒いのだ。
それが、両手の間でゆらりゆらり揺れていた。
「こいつは、“吸収する球“ってことで僕は“QQ“って呼んでますが、触れたもののエネルギーを奪うっていうんですかね。人なら昏倒するし霊体だと霊力っていうんですかね。それを奪ってしまうから活動を停止してしまう。僕の奥の手、1日1回の秘術です」
そう話す間に、QQはゆらゆらと形を変え薄ぼけたかと思うと、飛鳥がぱたんと両手を揃えると、その中にすっぽりと収まり消えてしまった。
「こいつを使うと、僕も体力奪われるのであまる使ってませんけどね」
そう言って苦笑して見せた。
全く屈託のない好青年ではないか。
だが、祖父たちの時代に何があったかかは遂に口にする事はなかった。
ひとしきり話をすると、2人で現場検証を始めた(正確には儂もおるで)。
正門の錠がおりているので、門扉の外から眺めることとなった。
「あそこ見えますか?」
飛鳥が尋ねる。
見ると校舎の前、生け垣の更に前に丸い跡があった。直径3メートルほどの。
(パワーポイントじゃ)
儂が心の声で遥に告げた。
遥が御意の意志を返してきた。
パワーポイント・・・力を使う、または発散した時に遺る現象で、この場合は円の中心にて力を使い、その周りに着いたものと思われる。