東京血風録
飛鳥の説明によると、こうだ。
男子生徒、日暮 幸多(ひぐらし こうた)
はおとなしい少年で、目立つようなことのない平凡な存在だった。
そんな彼が、突飛な行動をするようになった。
奇声を発したり、暴力的行動を起こしたりだ。
それと関連性があるのかないのか、学園内で大きな次元が立て続けに起こった。
1つに、立ち入り禁止の地下倉庫に人が立ち入った形跡があること。
1つに、図書室内にある持ち出し禁止の蔵書を集めた部屋が荒らされていたこと。
1つに、職員室で何名かの教師の机の鍵付きの引き出しが壊されていること。
があった。
事の重大性を鑑みた教師陣は捜査を開始、その目は生徒たちに向けられた。
その中で、異常行動が目立つ日暮少年が監視対象になった。
破壊行動の現場を押さえた教師陣、生徒会有志による連合隊は、日暮少年を追い詰めていった。
それで先ほどのパワーポイントの辺りで日暮少年を取り囲んだらしい。
掴みかかった教師3人を腕1本で投げ飛ばし、教師たちは3メートル以上も地面を転がる羽目になった。
包囲網から逃げるべく、彼のとった行動はジャンプである。
陸上競技のクラウチングスタートの姿勢をとると全身を伸ばした反動で跳んだ。
踏み込んだ脚を中心にぶわっと砂埃が舞い、周囲の者たちは顔を覆った。
日暮少年はあろうことか、4階建ての校舎を越え屋上に到達していた。
そのまま、屋上の鉄柵を掴んでその奥へ姿を消した。
下の者たちは、ただ唖然とするしかなかった。