東京血風録
 夜が明けた、

 遥たちの事務所である。
 遥は霧華の手によって、ソファーに寝かされ対面のソファーには霧華が寝ていた。
 父の遺したマンションは都内にあったのだが、生活の規範である霧華がこちらに多く寝泊まりしているため、それに伴い、遥もこちらで寝泊まりする回数が増えていた。



 遥が気絶するほど衝撃を受けたのには、理由がある。

 霧華はそれを理解した上で、編入手続きを強行した。

 そう、遥は引きこもりの傾向があった。

 儂も覚えておるわい。
 そいつは儂に出会った頃に始まっておるのだから。
 友達付き合いが下手だった遥だが、儂に出会って更に内に籠もる性格となった。

 その反面、儂との会話は増えていったのだから、はたから見たら奇妙に映ったとしてもおかしくない。
 学校では浮いた存在となり、いじめを受けていたのではないか。
 次第に登校拒否になり、何度も学校を休んだ。

 家を出たとしても学校へは行かず、目立たない河川橋の下で、儂を振っていた。
 当然霧華は心配して色々な策を講じたのだが、どれも労をなさなかった。

 そして、剣道への熱は熱くたぎり、練習時間は日に日に増えていった。
 そして、冷徹な美剣士が誕生するのである。

 学校へは剣道をしに行ってるようなものであったが、ちゃんと登校するようになったからよしとしよう。

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