東京血風録
薄い黒のストッキングを穿いてながらも、肌の白さが判るほどだ。
頭上に立ち尽くす弟に向かって、寝そべった女性・王道霧華(おうどうきりか)は話しかけた。
「昨夜は飲み過ぎたわ」
弟・王道遥(おうどうはるか)は溜め息をつきながら見下ろしている。
「大丈夫よ。契約はちゃんと進んでいるから」
目を瞑り、身体をのけぞりながら霧華は甘い吐息と共に吐き出した。
「今日は土曜日で学校休みだろうけど、現場だけ見に行きたい、どうなの?」
遥がつっけんどんに返す。
霧華はむにゃむにゃと聞きとれないような声で答えた。
「好きにすれば?校舎には入れないかも知れないけど、校庭も現場の1つだからそこは見れるわね」
霧華は起きる気はないらしい。長い黒髪に顔を隠し更に寝やすい体勢を探している。