東京血風録
月曜日。
霧華は戻ることなく、朝を迎えた。
遥は学校へ行く準備を始めていた。
今通う都内の高校へは、剣道の特待生制度ど入学しえおり、さほど勤勉家ではないので、教科書参考書の類は教室の机の中へ突っ込んだままだった。
何も入ってないカバンと木刀1本、それが遥の通学スタイルだった。
だから今日も、用意というにはあまりに質素だった。
ただ、心の準備には相当の時間を割いたのだった。
シャワーから始まり、詰め襟の学生服を着込んだ現時点でも、まだウダウダしていた。
儂をおもむろに握り締めると、深呼吸をした。
初めての学校とは、どれほどのプレッシャーがあるのだろうか、見ているこちらが心中穏やかではないわ。
すると、すっくと立ち上がり、靴に履き替えなんら躊躇することなくいつもの道を歩いて駅に着いた。
改札口のそばで立っている男に見覚えがあった。
詰め襟の学生服は筋肉ではちきれんばかりである。
藤堂飛鳥である。
にこりと笑いながら会釈をすると、
「おはようございます。僕も今日から編入するんですよ。折角だから、一緒に行きませんか?」と、言った。