東京血風録
2 対決 2
あの日へ話を戻そう。
あぁ、忌々しすぎて思い出したくないもんじゃがの。
校舎の角、藤堂飛鳥の危機を救った王道遥、その手には伊號丸。
鬼の憑いた男、日暮幸多に黒い木刀の切っ先を向けた。途端、後方へ後退ったかと思うと、反転し猛ダッシュした。
遥が追う。
「遥さん!」
飛鳥の叫びを後ろへ残し、遥は加速した。
日暮は、校舎と校舎の間、中庭を疾駆すると、思い切り左足で踏み切った。
尋常ではない跳躍だ。その高さの先に
校舎と校舎を繋ぐ、中空の渡り廊下があった。
この時のことを、教室の窓から見ていた生徒から聴いたところ、日暮幸多の跳躍にもびっくりしたが、その先渡り廊下の窓から中へ入るものだろうと見ていたらしい。
だか、実際にはそうはならず、日暮の体はそのまま肩口から、渡り廊下の壁に激突した。
しかもあろう事か、ぶつかった衝撃で渡り廊下の壁が倒壊した。
すると、雪崩式に向かい側の壁も倒壊し、その重みに耐えきれなくなった廊下が下向きのくの字に折れ曲がり、そのまま瓦解した。
その轟音と振動に、学園内が騒然となった。
立ち上る粉塵と風。
校舎から人々が出てきた。
逃げ惑う者とてかをかざしながら、現場を窺う者。
立ち込める砂埃。
ぞの周囲に日暮幸多の姿はなかった。
そして、王道遥の姿も。