東京血風録
遥の強い想いに押され、復活の儀を執り行うこととなった。
東京都内、マンションの1室、不思議な儀式が始まろうとしていた。
ソファーの上には、上半身裸の美青年が寝転がっている。
無駄な贅肉を削ぎ落とした、美しい筋肉の身体だった。
その両手には、くの字に曲がった黒い木刀。切っ先を鳩尾の辺りに置いて、長い刀身を支えていた。
すると、不思議な事が起こった。
切っ先が、鳩尾から遥の体内にめり込んでいった。押し込む、というより同化したような、傷や出血も無くスルスルと、潜っていく感じ。
痛みもないようで、遥はそれを見ながら両手で木刀を送っていた。
それは、剣鬼の力であろうが、ゆっくりではあるが着実に体内へと入っていく。
やがて、くの字に折れた部分が体内に収まると送るのをやめた。
静寂。
心の声は、体内に取り込まれているせいであろう、ダイレクトに響くように聞こえるようになった。
(これで、どうすればいい?)
(後は待つのみじゃ。時間が解決してくれる。家宝は寝て待てじゃよ。眠るがよい)
遥の問いに、そう答えると、かなりの神経を使ったのじゃろう、遥の意識が遠のいていくのが解った。
深い眠りに落ちたのだった。
それとほぼ同時刻。
東京駅構内。
新幹線ホーム。
下り新幹線に依って、1組の男女がホームに降り立った。
眼鏡を掛けた端正な男と、ショートボブの女であった。